数字を眺めるためではなく、「次に何を直すか」を毎週ひとつ決めるための手順書です。集客・採用のどちらの案件でも、同じ手順で回せます。
ツールを入れると数字は無限に見られます。見る数字を絞らないと、何も決まりません。このガイドでは「見る数字」「見る頻度」「どうなったら何をするか」を先に固定します。
ある案件で、計測タグを作ったあと「公開」を押し忘れていました。気づいたのは4ヶ月後。その間、訪問者のデータは1バイトも記録されておらず、そのデータは永久に取れません。原則4と§4の3点チェックは、これを二度と起こさないための手順です。
同じガイドでも、サイトの型と目的によって「見る場所」が変わります。最初にここを確認してください。
スクロール率を見てしまうことです。複数ページのサイトでは、離脱はスクロールの途中ではなくページの切り替わりで起きます。「トップは最後まで読まれているのに、次のページに誰も行っていない」——これはスクロール率では見えません。
ステップごとの残り人数を、必ず数字で出します。「途中で減っている」ではなく「Q3で42%が消えている」まで出さないと、直す場所が決まりません。
| 目的 | 主要CVの件数の目安 | 判断のリズム | 何で判断するか |
|---|---|---|---|
| 集客 | 月10〜100件 | 週次で判断できる | 数字で判断し、録画で裏を取る |
| 採用 | 月1〜5件 | 週次では判断できない | 1つ手前の指標で判断する(§3) |
「今週の応募0件」を毎週眺めても、何も決まりません。応募という結果は数が少なすぎて、増減がすべて誤差に見えます。採用では、応募の1つ手前を数字で見ます(§3の最後)。
〔主要CV〕の件数(月) = この案件の唯一の成果指標
GA4のイベント名:〔CVイベント名〕
最終的にこれが増えたかどうかだけが成果です。以下の指標は、これが増えない理由を突き止めるための道具であって、成果ではありません。
どの段で落ちているかが分かれば、直す場所は自動的に決まります。判断表は§7。
| 指標 | どこで見る | 何のため |
|---|---|---|
| 流入チャネル別のCV率 | GA4 → 集客 | どの流入が良質か。数が多い=良い、ではありません |
| デバイス別(スマホ/PC) | GA4 → ユーザー属性 | 主戦場のデバイスで判断します(この案件:〔 〕) |
| 検索キーワードと順位 | Search Console | 検索から来る人が何を期待しているか(§9) |
| 媒体側の実数 | 〔媒体名〕 | サイト側の「押した数」と媒体側の「届いた数」の差(§10) |
| 録画・ヒートマップ | Clarity | 数字だけでは分からない「なぜ」を確認する(§11) |
応募数で週次判断をしてはいけません。月3件の応募が月2件になっても、それは変化ではなく誤差です。代わりに、応募の1つ手前を数字で見ます。
| 見る指標 | 意味 | 目安 |
|---|---|---|
| 募集要項ページへの到達数 | 働くことを検討した人の数 | 応募数の10〜30倍あるはず。ここが月10人未満なら、応募が無いのは当たり前 |
| 募集要項の読了率 | 条件を最後まで読んだか | 低いなら、条件のどこかで気持ちが切れている |
| 応募フォームの開始数と完了数 | フォームで落ちているか | 開始があるのに完了が無い=フォームが原因。ここは即座に直せる |
| 応募数(月) | 結果 | 月次でのみ見る。週次では見ない |
集客:まずページを疑う(人は来ている) / 採用:まず「そもそも到達していない」を疑う
採用サイトには、求人媒体・SNS・紹介からしか人が来ません。募集要項に月10人しか到達していないなら、ページをいくら直しても応募は増えません。直すのは導線(媒体・SNS・社員からの共有)です。
この3つを確認してから、はじめて数字を見ます。順番を逆にしないこと。
タグが配信されていても、設定の変更やブラウザ側の事情で送信が止まることがあります。「0が3日続く」ときは、成果の低下ではなく計測の停止を最初に疑ってください。
〔週次の曜日〕に実施します。曜日を固定しないと、前週との比較が歪みます(土日の比率が変わるため)。
| # | やること | 所要 | 見る場所 |
|---|---|---|---|
| 0 | §4の3点チェック | 2分 | GA4 |
| 1 | 直近7日 vs 前7日 で ①〜④ を記録する | 5分 | GA4 |
| 2 | 一番落ちている段を1つ特定する | 1分 | ファネル |
| 3 | その段に該当するClarityの録画を3〜5本見る | 5分 | Clarity |
| 4 | 「来週直す1箇所」を決めて記録する | 2分 | 記録シート |
週次の成果物は「今週の数字」ではなく、「来週直す1箇所」です。決まらなかった週は「今週は判断材料が足りなかった」と記録します。空白のまま流さないこと。
複数の問題が同時に見えたときは、上から順に片付けます。迷う余地を残すと、迷った週は何もしないまま終わります。
| # | やること | 見る場所 |
|---|---|---|
| 1 | 月次のCV件数・CV率を記録し、前月と比較する | GA4 |
| 2 | 流入チャネル別のCV率を比較。CV率の高いチャネルに寄せる | GA4 → 集客 |
| 3 | スマホとPCのCV率の差を確認。差が2倍以上ならスマホ側に問題がある | GA4 → ユーザー属性 |
| 4 | Clarityの Rage click / Dead click を確認する | Clarity → Dashboard |
| 5 | 検索キーワードと順位を確認する | Search Console |
| 6 | 媒体側の実数と、サイト側のクリック数を突き合わせる | 〔媒体名〕/GA4 |
| 7 | 今月やった改善と、その前後の数字を振り返る | 記録シート |
| 8 | 来月の重点を1つ決める | — |
上から順に見て、最初に引っかかった段を直します。下の段から直しても効きません。②と③が同時に落ちているように見えるときは②から。②が直ると③の母数が変わり、③の数字は勝手に動きます。
| 落ちている段 | 症状 | 疑うこと | 打ち手の例 |
|---|---|---|---|
| ① セッション | そもそも人が来ない | 露出が足りない。検索・広告・SNS・媒体・紙の導線 | 流入施策。サイトを直しても解決しません(§9・§10) |
| ② 早い段階で帰る 型1:スクロール50%未満 型2:次のページに行かない 型3:最初の設問で離脱 |
入口で帰られている | 流入元の期待と、最初に見える内容がズレている | 広告文・検索クエリ・媒体の見出しと、ページ冒頭のコピーを揃える/画像とキャッチを差し替える |
| 中盤で落ちる | 読み始めるが最後まで行かない | 情報が多すぎる/読みにくい/根拠が無い | 段落を削る/実績・事例・料金・条件を先に出す/画像で分かるようにする |
| ③ CTAまで来るが押されない | 読了率は高いのにクリックが少ない | 不安が残っている(料金・所要時間・しつこい営業への懸念・応募のハードル)/ボタンが目立たない | ボタン直前に不安解消を置く(「無料」「1分で完了」「営業しません」「見学だけでも可」)/ボタン文言を具体化(「送信」→「無料で相談する」)/ボタンを追従表示にする |
| ④ 押されるがCVしない | クリックはあるのに完了しない | 遷移先とのギャップ/フォームが長い/スマホで操作しづらい | フォーム項目を削る(目安:5項目以内)/押した先で何が起きるかをボタン付近に書く/入力補助(自動入力・キーボード種別) |
小さい数字の増減に反応するのが、最もよくある失敗です。
| 状況 | 判断 |
|---|---|
| CV件数が週10件未満 | 1〜2件の増減は誤差です。数字で判断せず、Clarityの録画で判断します |
| CV件数が週30件以上 | 前週比 ±20%以上の変化なら、原因を探す価値があります |
| 変化があった日が1日だけ | 施策の効果ではない可能性が高い(外部要因・イベント・ボットを疑う) |
| セッションだけが急増した | 流入元を確認します。CV率が同時に落ちていれば、質の悪い流入が増えただけ |
| 採用で応募数が増減した | 月次でしか見ません。週次の増減は原則すべて誤差です |
「今週は判断できない」は正しい結論です。判断できないのに何かを決めると、次の判断材料が濁ります。
GA4は「来た後」しか分かりません。「検索結果で見られたが、選ばれなかった」はSearch Consoleにしかありません。
| 数字 | 意味 | どう使うか |
|---|---|---|
| 表示回数 | 検索結果に出た回数 | 少ない=そもそも検索で見つかっていない |
| クリック数 | 実際に来た数 | — |
| CTR | クリック ÷ 表示回数 | 順位のわりに低いなら、タイトルと説明文の問題 |
| 平均掲載順位 | 検索結果での位置 | 下がっていれば原因を探す |
| 信号 | 意味 | やること |
|---|---|---|
| 10位以内 → 11位以下 | 1ページ目から消えた | 今月中に対応。該当ページの内容を1箇所だけ直す |
| 3位以内 → 4位以下 | 上位から後退 | 同上 |
| 表示回数は多いのにCTRが低い | 検索結果で選ばれていない | タイトルと説明文だけ書き換えます。本文は触りません |
| インデックスエラーが増えた | ページが検索対象から外れている | 制作側に連絡する |
| 表示回数が極端に少ない | 評価対象になるほど見られていない | 何もしません。これは正しい状態(露出が足りないだけ) |
Search Consoleのデータは収集から約48時間遅れて見られるようになります。昨日の数字は今日には出ません。順位は日々動くため、1日単位で一喜一憂せず、月単位の平均で見てください。データは16ヶ月しか遡れません(§12)。
サイト側の「押した数」と、媒体側の「実際に届いた数」は必ず食い違います。この差が改善のヒントです。
| サイト側(GA4) | 媒体側 | 差が意味すること |
|---|---|---|
| LINE導線のクリック数 | 友だち追加数(経路別) | 押したのに追加しなかった人。ボタンの文言と、追加後に何が起きるかの説明が足りない |
| 求人媒体への遷移数 | 媒体上の応募数 | 媒体側の掲載内容と、自社サイトの内容がズレている |
| SNSリンクのクリック数 | フォロワー増加数 | プロフィールで離脱している |
| 広告のクリック数 | 広告管理画面のクリック数 | 数字が大きく違うなら計測の不具合を疑う |
媒体別に経路を分けておくと、この突き合わせが一気に楽になります。例:LINE公式アカウントの「友だち追加ガイド」で、貼る場所ごとに別のURLを発行しておく(サイト上部用・サイト下部用・チラシ用・SNS用)。あとから「どこから来た友だちか」が分かります。
片方だけを見ていると、この差に気づけません。必ず両方を並べます。
数字は「どこで落ちたか」しか教えてくれません。「なぜ落ちたか」は録画とヒートマップで見ます。
| 目的 | フィルタ条件 |
|---|---|
| 入口で帰る理由 | 滞在10秒未満のセッション |
| 中盤で落ちる理由 | スクロール30〜70%で終わったセッション |
| CTAが押されない理由 | CTAまで到達したがクリックなし |
| 操作の不具合 | Rage click あり(同じ場所を連打=反応しない要素がある) |
| フォーム・診断の離脱 | 該当ステップまで到達し、次に進まなかったセッション |
1回に見るのは3〜5本。それ以上見ても、判断は増えません。
気になった録画は、その場で「お気に入り」に入れてください。通常の録画は30日で消えますが、お気に入りに入れたものは最大9ヶ月残ります(§12)。「あとで見よう」は効きません。
| 種類 | 見ること |
|---|---|
| クリックマップ | 押せない場所が押されていないか(画像やテキストがボタンだと誤解されている) |
| スクロールマップ | 大事な情報が「読まれる範囲」の中にあるか。CTAが誰も届かない位置にないか |
Clarityは訪問者の画面操作を録画します。データの管理主体は、制作会社ではなくサイトの運営者(=御社)です。
| # | やること | なぜ |
|---|---|---|
| 1 | プライバシーポリシーに、アクセス解析と録画ツールの利用を明記する | 訪問者に伝える義務があります。ツール名(Google アナリティクス/Microsoft Clarity)まで書きます |
| 2 | フォームがある場合、マスキング設定を確認してから公開する | 氏名・メールアドレス・電話番号の入力が録画に映る可能性があります。設定を確認せずに本番に入れないこと |
| 3 | 録画に個人情報が映っていることに気づいたら、すぐ制作側に連絡する | 設定で止めます |
運用の締め切りは、ツールの保存期間が決めています。ここを知らないと「あとで見よう」が効きません。
出典:Microsoft Clarity FAQ/[GA4]データ保持/Search Console と Google アナリティクスの連携(いずれも 2026-09-06 確認)
| ルール | 理由 |
|---|---|
| 最低2週間そのまま | 1週間だと曜日の偏りと、単発のイベントの影響を消せません |
| 期間中は他を触らない | 他を触ったら、その回の比較は無効になります |
| 元に戻せるようにする | 変更前の状態をスクリーンショットで残します |
| 採用案件は最低4週間 | 応募の母数が小さいため、2週間では差が見えません |
無理に「効いた」ことにするのが一番よくありません。判断不能が3回続いたら、それは母数が足りないという結論です。改善ではなく、流入を増やす番になります。
| # | 報告する内容 |
|---|---|
| 1 | 今月の〔主要CV〕:___件(前月 ___件) |
| 2 | 一番弱かった段:② / ③ / ④ のどれか |
| 3 | 今月やった改善:1〜2件(何を、いつ) |
| 4 | その結果:改善 / 悪化 / 判断不能 |
| 5 | 来月の重点:1つだけ |
セッション数を先頭に置かないこと。成果はCVです。セッションが増えてもCVが増えていなければ、質の悪い流入が増えただけです。
| # | やりがちなこと | なぜダメか |
|---|---|---|
| 1 | 毎日GA4を見る | 日次の増減はほぼノイズ。判断できないのに不安になるだけ |
| 2 | 同時に複数箇所を直す | 何が効いたか分からず、次の判断材料が残らない |
| 3 | セッション増加を成果として報告する | CVが増えていなければ、質の悪い流入が増えただけ |
| 4 | 業界平均CVRと比べる | 集計条件が不明で比較にならない。自分の先月と比べる |
| 5 | 自分たちのアクセスを除外していない | 制作中は自分たちのアクセスが大半。§4を必ず実施 |
| 6 | PCで確認して判断する | 主戦場がスマホなら、スマホの数字と実機で判断する |
| 7 | 数字が悪いとサイトだけを疑う | ①セッションが足りないなら、サイトをいくら直しても増えない |
| 8 | サンプルが少ないうちにA/Bテストを始める | 差が出ても偶然と区別できない。開始条件は§15 |
| 9 | 採用で「今週の応募0件」を毎週議題にする | 判断できない数字を毎週見ると、見ること自体が形骸化する。応募は月次で見る |
| 10 | 録画を個人の監視に使う | 目的外。信頼を失う |
| 11 | 数字が出る前に改善を始める | 比べる基準(ベースライン)が無いと、効果が永久に判定できない |
| 12 | ツールを増やす | 同じ指標を2つの数字で持つと、どちらを信じるかで会議が止まる |
満たすまでは導入しません。満たさないうちにやっても、勝ち負けを判定できません。
| 段階 | 条件 | やること |
|---|---|---|
| Phase 1 | 運用開始直後 | GA4+Clarityで観察し、1箇所ずつ直して前後で比較する(このガイドの内容) |
| Phase 2 | 広告出稿を始めたら | 広告側でページを出し分ける(ページを複製し、広告のURLを分ける)。追加費用なし |
| Phase 3 | 月2,000セッション かつ 月30CV が3ヶ月継続 | 本格的なA/Bテストツールの導入を検討する |
CV率3%のサイトで「3%→4%」を確実に見分けるには、各パターンに数千セッションが要ります。これを下回るうちは、A/Bテストより「Clarityの録画を10本見る」ほうが圧倒的に発見が多い。
1ヶ月目に改善を始めないことが重要です。比較する基準が無い状態で直しても、効いたかどうか永久に分かりません。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| セッション | 訪問1回。同じ人が翌日また来れば2セッション |
| CV(コンバージョン) | 達成してほしい行動。この案件では 〔主要CV〕 |
| CV率 | CV ÷ セッション |
| キーイベント | GA4上でCVとして設定したイベントの呼び名 |
| ファネル | 訪問からCVまでの段階。各段でどれだけ残るかを見る |
| ヒートマップ | クリックやスクロールを色の濃さで可視化したもの |
| Rage click | 同じ場所を連打すること。反応しない要素があるサイン |
| Dead click | クリックしても何も起きない場所への操作 |
| CTR | 検索結果に表示された回数のうち、クリックされた割合 |
| 表示回数 | 検索結果に表示された回数。クリックされていなくても数えられる |
| 内部トラフィック | 自分たち(運営側・制作側)のアクセス。除外しないと数字が歪む |
| ベースライン | 改善前の基準値。これが無いと効果を判定できない |